この町には明治6年より百二十余年酒造りに励んできた「松翁(まつおきな)」醸造元松尾酒造がある。地方の酒造家は、昔からその町の名家であることが多いが、松尾家も江戸時代に現在地に居を構え、米屋を営む大地主であった。松尾といえば、酒の神様といわれる京都の松尾神社を思い起こさせるが、この松尾酒造の松尾家はこの神社との関係が深く、京から九州、そして四国へと移住してきた一族といわれる。
酒造りは明治6年松尾庄吉により創業され、現在の社長で6代目を継承する。創業の端緒を開いたのは、屋敷内に掘られた井戸で、こんなエピソードがある。庄吉は長男の徳太郎(初代造酒)が嫁を迎え入れるようになったが、「井戸の無い家では娘が難儀をするので嫁にはやれぬ」といわれ、さっそく井戸を掘って無事嫁を迎え入れたという。松尾酒造の子孫存続を支えたこの井戸は、現在でも醸造用水として使用されている。
当初はこの井戸にちなんで「松の井」という銘柄であったが、現在の「松翁」の名は2代造酒市助が明治末年二「翁味醂」の名で本格的なみりん醸造を手がけた時の翁と、松尾の姓を組合わせ、醸造の神松尾神社の守護のもと長寿延命の酒として命名された。
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●住所/高知県香美市土佐山田町西本町5-1-1
●電話/0887-53-2273
●創業/明治6年
●主な出荷先/高知県
●主な製造銘柄/松翁・土陽正宗・松翁蔵酒