「いいお酒ができる、といって専務が毎日かけているんですよ。」と室の前で竹簾に蒸米を広げて冷ます作業を手伝う蔵のおばさんが教えてくれた。
その専務自身、醸造技術者の高齢化、後継者不足で杜氏の数自体も減少しているのが現状という中で、「自らの手で納得のいく酒造りをしてみたい」と、それまでいた杜氏が辞めたのを転機に杜氏になることを決心。桶売りもやめ、年間生産量を三分の一の250石(45キロリットル)に抑えて、小規模経営の限界に挑戦した。蔵人も年中雇用の社員が1人。あとは室仕事や甑出しなど、蔵の中の作業と瓶詰めを兼任して手伝うおばさんが3人いる。
仕込み水は古来より酒造りに適している赤野川の伏流水を使用。この川の水を玉にたとえ、「玉川(たまがわ)」と称した。「玉川」では最後の上槽に今も手間のかかる昔ながらの酒槽を使っている。醪を酒袋に詰めるのも、それを槽に乗せるのも技術を要する大変重労な作業であるが、全ての酒をこの方法で搾っている。最初は醪自体の重みで酒が袋から垂れてくるがその後、上からゆっくりと圧力をかけて搾る。そうすると酒本来の旨味を残したままの香り高い酒が槽口から溢れ出す。
小量生産に徹し、手間暇かけて造られた「玉川」。小さな蔵の温もりが直に伝わってくるような逸品である。
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●住所/高知県安芸市赤野甲38番地1
●電話/0887-33-2117
●創業/明治36年
●主な出荷先/安芸市内・高知県
●主な製造銘柄/玉川・安芸虎・伊太郎